株式会社モコハウス








平成22年4月20日更新





 今回は、贈与に関する相続税と民法の大きな違いについてひも解いてみましょう。住宅取得にあたって、取得資金や土地などを贈与する事例は沢山ありますが、相続税と民法上の取扱いの違いにまで目を向けていることは少ないといえます。そこで今回は、上記ふたつの大きな違いをご紹介します。

■ 相続税と贈与税
相続と贈与は両者とも相続税法で規律規されており、単独で贈与税法なるものはなく、相続税法の一部として贈与税が存在します。そこで、贈与税は相続税の補完税といわれます。

相続税法は、相続税と贈与税の計算方法やその申告や納付等に関して、そして今回、主要テーマである贈与税における配偶者控除や相続精算課税についての条項を定めています。

また、1500万円まで非課税扱いになる贈与税減税や110万円の基礎控除に関しては、租税特別措置法で規定しています。

■ 民法
民法は、憲法や刑法など公的なことを規律する公法に対して、個人間の権利関係を規律する私法といわれます。私人の日常生活が円滑に営まれるように規律する法律といえます。

民法では、相続時の法定相続分を設定していますが、これはひとつの目安にしか過ぎず、遺言や遺産分割協議において自由に決めることができます。また、相続税法における計算方法に縛られることはありません。

民法上の分割時には、相続税法を計算する時には無関係だった生前贈与財産にまで話が及ぶ場合があります。

そこでは、「贈与税に関するどの特例を利用した財産かどうか」というようなこととは無関係で、贈与に関わる両当事者の贈与時点の意識、そして社会・経済的立場など様々な事情を考慮した上で、改めて生前贈与財産を持ち戻し(加算)の対象とすべきかどうかを判断することになります。

参考に・・・
(1)生命保険
被相続人が加入していた配偶者が受取人の生命保険金は、相続税法上は「みなし相続財産」として遺産総額の中にプラスされますが、民法上は、受取人である配偶者の固有財産となります。
(2)養子縁組
相続税法上は、実子がいる場合の養子縁組は1人まで、いない場合は2人までと規制されていますが、民法上は、税金対策のための養子縁組は認められませんが人数に制限はありません。。


  

■相続税法上の住宅取得等に関わる贈与
現在、住宅に関連する贈与税の特例には下記の4つがあります。

(1)暦年課税の非課税額110万円
幅広く適用される租税特別措置の規定ですが、当然、住宅取得にも関わります。

(2)相続時精算課税制度
使用目的が限定されない一般の贈与と、住宅取得資金の贈与との2種類があり、上限2500万円まで贈与税が非課税となります。

(3)贈与税減税
20歳以上の子や孫が直系親族から受ける住宅取得資金に関しては、平成22年度は1500万円、平成21年は1000万円まで非課税となります。

(4)居住用財産の贈与に関わる配偶者の特別控除
婚姻機関20年以上の配偶者に対しての居住用財産や住宅取得資金であれば、上限2000万円まで非課税とするものです。参照

上記(1)は、贈与から3年以内に贈与者の相続が発生した場合は相続財産に加算、そして(2)は、年限に関係なく相続財産に加算されます。
一方、(3)、(4)は贈与後に相続が発生しても相続財産に加算されることはありません。


  

■民法上の贈与済み財産の取扱いについて
民法上の贈与済み財産に対しての取扱いは、下記の条項を参考にすれば理解しやすいと思います。

(特別受益者の相続分)
第903条の抜粋
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

(特別受益者の相続分)
第904条
前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

 
上記は相続人に適用される条項で、贈与されてからの年限はありません。
上記条文の「生計の資本として贈与を受けた者」に税法上の4つの贈与が該当するかどうかがポイントとなります。

生計の資本には、特別な事情がない限り住宅取得資金や不動産の贈与等も含まれるとされています。これは個人的な表現ですが、他の相続人とのアンバランスになった資産部分といえるでしょう。

もし、相続税法上の4つの贈与が民法903条に該当するとなれば、その資産評価分を持ち戻し(加算)した上で相続財産を分割することになります。しかも、特別受益にあたる資産を相続時の評価額に直して計算することになります。

計算例
・被相続人死亡時の遺産総額8000万円
・相続人3名(A、B、C)で均等に3分割
・相続人Aには特別受益にあたる生前贈与1000万円あり

遺産総額8000万円+1000万円(持ち戻し分)=9000万円
9000万円÷3人=3000万円(ひとり当たりの相続額)
Aの相続額:3000万円-1000万円(特別受益)=2000万円
B、Cの相続額はそれぞれ3000万円

※もし、遺言等で特別受益の免除の指定があれば、8000万円を3分割する場合もあります。上記持ち分の割合は便宜上用いたもので、民法上は自由に決めることが可能です。念のため・・・


■遺留分を計算する場合の規定
相続人には、最低限保証されている相続財産に対する持ち分があります、それを遺留分といいます。また、この遺留分を計算する際には、上記の特別受益にあたる財産も加算されます。

(遺留分の算定)
第1030条
贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


特別受益は、相続人へ贈与された財産に限定されていますが、遺留分の算定基準である第1030条では、相続人でない人にされた贈与も対象となります。

また贈与が、条文中にある「遺留分権者に侵害を加えることを知って贈与」にあたるかどうかを遺留分権者が証明する必要まではなく、贈与の当事者が予想し得る状況にあったかどうか、また、贈与後に相続財産が増加することにより、再び遺留分を満たすことにはならないであろうことを認識できる状況にあったかどうかにより判断するとされています。

下記は、遺言によって「全ての財産は配偶者Aに相続させる」と相続人の指定がり、かつ配偶者Aに特別受益があった場合の計算例です。

事例
・被相続人死亡時の遺産総額8000万円
・相続人3名(配偶者A、子B、子C)
・遺言により相続人Aが全ての財産を相続
・相続人配偶者Aには特別受益にあたる4000万円の生前贈与あり
・子B、Cの遺留分は遺産総額の8分の1

B、Cの遺留分
8000万円+4000万円(特別受益分)÷8=1500万円
∴B、Cにそれぞれ1500万円取得することになります。


■結論
ここで申し上げたいことは、贈与の特例は課税方法や計算上の取扱いを規定したもので、民法上の贈与の扱いとは別物ということです。

相続税法上の各贈与は確定申告すれば完了ですが、民法上、贈与済み財産の権利は、脈々と相続人間で残り続けているといえます。

そこで、相続(争続)対策として相続税法上の贈与を活用する場合は、非課税ということだけに目を向けるのではなく、民法上の取扱いにも配慮することが大切になるといえます。ご参考になれば幸いです。
 








   







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